僕には趣味がたくさんありますが、
予備校講師を始めてから、一つ趣味が増えました。
それは、「大学の総長のメッセージを読む」ことです。
主に、東大・京大・阪大の入学式祝辞と卒業式式辞です。
初めて興味を持ち始めたのは、
2011年3月の大阪大の卒業式式辞です。
2011年3月といえば、東日本大震災があった直後です。
当時の大阪大の総長は鷲田清一さん。
阪大の長い歴史の中で初めて文系学部の学部長から
総長になった人だと記憶しています(違ったらごめんなさい)。
そこに書かれた言葉の一つ一つが
あまりにも洗練されていて、
深い感動を感じたのを今でも覚えています。
(今日はこれは割愛します)
さて、今日見つけたのが、
京大の入学式の祝辞。総長は山極壽一さん。
(文書)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/president/speech/2020/200407_1.html
自分の母校ということもあって贔屓目で見てしまいますが、
今の時代に必要なことを、世界情勢と時代の流れを
俯瞰したところから語っているところに、
本質的なものを感じました。
この祝辞の中で多くの人に伝えたいことはたくさんありますが、
今日は一箇所だけ引用します。
(京都大学のホームページより引用)
ーーー引用ここからーーー
現代は、グローバル化の大きな波が押し寄せる時代です。みなさんの将来活躍する舞台も、日本という国を大きく越えて世界に広がっています。地球社会の調和ある共存のために、解決すべき課題がたくさんあります。自然資源に乏しいわが国は先端的な科学技術で人々の暮らしを豊かにする機器を開発し、次々にそれを世界へと送り出してきました。海外へと進出する日本の企業や、海外で働く日本人は近年も増加傾向にあり、日本の企業や日本で働く外国人の数もうなぎのぼりに増加しています。みなさんがその流れに身を投じる日がやがてやってくると思います。そのためには、日本はもちろんのこと、諸外国の自然や文化の歴史に通じ、相手に応じて自在に話題を展開できる広い教養と、常識を疑いつつ真理を追求する気概を身につけておかねばなりません。理系の学問を修めて技術畑を歩んでも、国際的な交渉のなかで多様な人文社会系の知識が必要になるし、文系の就職先でも理系の知識が必要な場合も多々あります。世界や日本の歴史にも通じ、有識者たりうる質の高い知識を持っていなければ、国際的な舞台でリーダーシップを発揮できません。
ーーー引用ここまでーーー
この春から大学生になる人に伝えたい。
「一般教養も、気を抜かずに学ぶべし」
「常識を疑い、真理を追い求めるべし」
教養について。
なぜ1回生2回生のときは主に一般教養を学び、
専門は3回生からなのか。
その理由は、山極総長が語ってくれています。
小川なりの解釈としては、自分の専門のみに精通しているという状態では、
本当にその専門を活かすことができないのだと思います。
例えば、本当に自分の専門を活かすためには人と会話する必要があります。
その際に正確な言葉を使える必要があります。
また、どのような場所でどのようなタイミングでどのように
その専門を活かすかは、世界情勢や歴史を学ぶと
より適切な場所やタイミング・手法が見えてくるでしょう。
常識について。
高校まで学んだ教科書は、間違いのないものとして安心して学んでいました。
ところが大学で学ぶこと、そして社会に出て痛感することは、
「答えのない世界である」ということ。
常識=正解、ではないということ。むしろ常識が新たな発見や
イノベーションの邪魔をすることが多いでしょう。
これを脱するには、今世の中にある当たり前、常識を疑うことが必要です。
「本当にそうなの?」
という視点こそ、学問には必要な視点だと思います。
この大変な時期に大学に入学をした事実は変えられませんが、
ある意味、他の世代とは全く異なる経験をします。
ということは、今までの常識に捕らわれない考え方が
一番できる世代、とも言えると思います。
「あのことがあったから、変革のきっかけを創れた」
と後から振り返って言えるようになると思います。
大変なタイミングでの入学で、なかなか言ってもらえないかも
しれませんので、小川はちゃんとお伝えしたいと思います。
大学ご入学、おめでとうございます。